イノベーション
革新的な企て、新機軸のこと。
わが国でこのカタカナ語が用いられるようになったのは、主として「技術革新」の意味においてであるが、近頃ではもっと広範に用いられている。
企業では、新しい生産方式や製品の開発・導入が決定的な意義を有するため、そうした分野で多用される。
その他、諸々の社会運動で新局面を切り拓くような新たな展開がみられたとき、あるいは、「発想の転換」などといわれたりする新しい思考方法の展開があったときにも、それらをイノベーションとよぶ。
行政にとってイノベーションがことに問題になるのは、行政の仕組み、なかんずく各種行政を担当する官僚制機構が、それを取り巻く環境の変化に鋭敏でなく、とかく硬直化しがちなためである。
官僚制とよばれる組織形態は、行政組織に固有のものではないが、私企業と異なって、組織活動の上で他組織と競争しあう誘因に欠け、自己の組織活動を評価する尺度が曖昧であるうえ、法規に縛られる度合が強いため、どうしても現状維持的な傾向を強めがちとなり、官僚制組織に一般にみられる官僚主義的病理現象が、ことのほか顕著に現われやすいと考えられている。
同じ政治機構を構成する他の組織体と比べても、議会や政党が世論の動向とか選挙の結果に左右されるのに対して、行政官僚制については、そうした事柄から影響を受けないままに置かれているとみなされるのが普通である。
逆にいうと、それだけにイノベーションを図る必要性が強いということになる。
イノベーションの必要性が表面化するのは、現在行っていることと行わなければならないと信じていることとのギャップがある程度まで大きくなった時である。
現在の業績水準とありうべき業績水準との較差が一定程度に達すると、なにが原因でそうなったかをつきとめ、現行のやり方に問題点があれば、それを解決しようという動機づけが働く。
問題解決に向かわせる要因についての常識的な仮説によれば、第一にその必要性を感じさせることが大切であり、第二に改革のチャンスを与えなければならない。
なお、当事者の自己革新に期待する場合には、現行の実績とあまりかけ離れた理想的水準に固執すると、できもしないことを求められても困るといった拒絶反応が先に立ちやすい。
つまり、現在の業績水準とありうべき業績水準とのギャップが大きすぎると、当事者に自己革新への努力を引き起こす契機になりにくいということである。
反対にその業績ギャップが小さすぎても、「小手先いじり」でごまかすことになってしまいがちとなる。
いわゆる「官僚制の惰性」をチェックするための改革手法としては、行政の外からの外在的刺激によって取り組まれる行政改革のほかに、日常的な行政管理活動のなかに、その一環として自己革新を図るための仕組みを組み入れる手法が考えられる。石塚孝一氏によると、「目標による管理」や「組織開発」など、民間で開発された管理手法の導入も一つの方途であるが、それらと並んで近年重要視されているものに「施策評価」の活動がある。
管理手法としてのその有用性は、先の業績ギャップの存在とその程度を明らかにすることにより、革新の必要性を当事者たちに認識させることにある。